ロードムービーとは、主人公の旅で起こるさまざまな出来事を描く映画作品です。
主人公は何らかの要因から日常生活の環境を離れ、未知の旅に出ます。そして、道路上で遭遇するさまざまな出来事を通じて、主人公心境の変化が描かれます。旅を通して、自己発見をするのが主な筋立てです。
実際の道路やスポットで撮影されることが多く、よりリアルな感触を持つことが特徴です。美しい景色のなかでの旅気分を味わえます。また、旅先での交流シーンが感動をもたらし、困難を切り開く主人公の姿などの見どころが多いです。特に、見た人の価値観や生き方を変える名作も多数存在します。
最高の人生の見つけ方(2007)
アメリカを代表する2大オスカー名優、ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマンが共演した人間ドラマです。
ガンで余命6か月を宣告されたふたりの老人が「死ぬまでにやりたいことリスト」を手にします。そしてリストを実現させるため、人生最後の旅に出ます。
性格も境遇もまったく違うふたりのおじいちゃんの掛け合いが絶妙です。特に、クスクス笑わせるシーンが多いです。一方、思わず感極まって泣いてしまうシーンもあります。
テルマ&ルイーズ(1991)
スリルあり、感動あり冒険と友情を描くロードムービーです。主演は2大オスカー女優、ジーナ・デイビスとスーザン・サランドンが素晴らしくかっこいいです。また、2人はそろって、アカデミー主演女優賞候補になりました。
平凡な主婦のテルマとウェイトレスのルイーズは、週末のドライブに出掛けます。しかし、その途中、テルマが見知らぬ男たちにレイプされかけ、助けに入ったルイーズが男たちを射殺してしまいます。
ごくごくありふれた平凡な女性2人がひょんなことから犯罪者となります。それから、メキシコへと危険な逃避行を繰り広げます。束縛から解放され、強く変わっていく2人女性の姿にエールを送りたくなります。
グリーンブック(2018)
第91回アカデミー賞で、作品賞、脚本賞、助演男優賞の3部門を受賞しました。また、実話をもとにした感動ドラマです。人種や階級の壁を越えて、お互いに心を通じ合う白人と黒人の友情を描きます。
1960年代のアメリカ南部、まだ人種差別が色濃く残ります。もとボディーガードのトニーは、演奏ツアーを計画する黒人天才ピアニストのシャーリーに運転手として雇われます。そして、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りにします。2人は出自も性格も全く異なり、衝突を繰り返すものの、段々友情を築いていきます。
セントラル・ステーション(1998)
ベルリン国際映画祭で初の金熊賞を受賞したブラジル映画です。父親探しを通して少年と中年女性の心の交流を暖かく描いたロードムービーです。
ドーラはリオの中央駅で手紙の代筆業を営む初老女性です。ある日、常連客が急死し、彼女は9歳の少年を引き取ります。そして、互いを避けていた2人は、少年の父を探す旅を通して孤独な心を通わせていきます。また、ブラジルの田舎の美しい風景を叙情豊かに描きます。
カールじいさんの空飛ぶ家(2009)
カールじいさんの空飛ぶ家(2009)
第82回アカデミー賞で長編アニメ映画賞を受賞した傑作です。
カールじいさんは愛する妻に先立たれ、古い一軒家にひとりで住みます。彼の家が地区開発の波が押し寄せ、ついに立ち退きを余儀なくされます。そこで、カールじいさんは亡き妻エリーとの約束を果たそうと、南米の秘境、パラダイスの滝への旅を思い立ちます。そして、思い出が詰まった家に無数の風船をつけて、空に飛び上がり南に向かいます。ところが、いつの間にか近所の少年ラッセルが入り込んでいます。
興奮あり感動あり、カールじいさんが孫のような少年と絆を深める、友情のアドベンチャーです。
サイドウェイ(2004)
第77回アカデミー賞で5部門にノミネートされ、脚色賞を受賞したロードムービーです。また、2人の中年男性がワイナリーをめぐる旅を通じ、生きる意味を見つめた人間賛歌です。
マイルスは国語教師をしながら、小説家を目指す中年男性です。ある日、売れない俳優の友人ジャックが結婚することになります。2人は独身最後の記念にカリフォルニアのワイナリーをめぐる旅に出発します。道中で出会った女性マヤとステファニーとデートをすることになります。ジャックは婚約者がいながら、ステファニーと意気投合します。一方、マイルスは1年前に離婚したマヤに魅了されます。しかし、冴えない自分を自己嫌悪し、彼女に好意を明かせないです。
多彩なワインに人生を投影しながら、人生に疲れた中年男性がふと立ち止まる「寄り道(サイドウェイ)」を綴った秀作です。また、実際にカリフォルニア各地の有名ワイナリーがロケ地となりました。
シェフ 三ツ星フードトラック始めました(2014)
「アイアンマン」のジョン・ファブローが製作・監督・脚本・主演の4役を務めました。元総料理長がフードトラックの移動販売をはじめたアメリカ横断の旅を描いたハートフルコメディです。
カールは、ロサンゼルスにある一流レストランの総料理長です。自分の料理を酷評する評論家や口うるさいオーナーとケンカして店を辞めてしまいます。それから、心配する元妻イネスの提案で、カールは息子パーシーを連れて、故郷のマイアミを訪れます。そこで食べたキューバサンドイッチの美味しさに驚き、フードトラックでサンドイッチの移動販売をすることを思いつきます。そしてカールは家族と仲間たちの協力を得て、マイアミからニューオリンズ、ロサンゼルスへと旅を続けていきます。
LIFE! (2013)
1947年に発表された名作「虹を掴む男」を現代風に翻案してリメイクしたコメディ映画です。臆病で不器用な男が人生変える旅に出る姿を描きます。ベン・スティラーの監督・主演です。
主人公ウォルターは地味で冴えない中年男性です。彼は写真雑誌「LIFE」の写真管理部で働きます。普段は好きな女性とまともに会話をすることもできないです。しかし、空想癖があり頭の中ではいつも勇敢で情熱的な性格です。ある日、ウォルターは廃刊が決まった「LIFE」の最終号表紙に使われるはずの写真フィルムが見つからずピンチに陥ちります。そして、唯一フィルムを知っている写真家ショーンを追って、世界をめぐる冒険の旅に出ます。
ノマドランド(2020)
アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を描いたロードムービーです。第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞の3部門を制覇しまました。また、第77回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した秀作です。
リーマンショック後、60代の女性ファーンは、企業の倒産とともに、長年住み慣れた住処を手放します。そして、彼女はキャンピングカーに全ての思い出を詰め込で全米各地を放浪する旅に出ます。「現代のノマド(遊牧民)」として、彼女は各地で短期の仕事をします。また、別の土地に移動することを繰り返します。そのため、各地で自分と似た境遇の人々と出会って交流することができます。
アバウト・シュミット(2002)
名優ジャック・ニコルソンが主演を務め、ほろ苦く人生ドラマです。
主人公シュミットは、一流保険会社を定年退職しました。彼は平凡ながら幸せに暮らしてきました。これから、悠々自適の生活を送る予定です。ところがここにきて急に、妻ヘレンが急死してしまいます。彼は、今までの人生を見つめ直しなければならないです。そして、離れて暮らす一人娘ジーニーの結婚式を手伝うために、キャンピングカーでデンバーへ向かいます。
人生の悲喜こもごもを鮮やかに体現します。また、自分を見つめ直そうとひとり旅に出る様子をみせた名優ニコルソンの渋い好演も見ものです。
わたしに会うまでの1600キロ(2014)
人気女優リース・ウィザースプーン主演のヒューマンドラマです。アメリカ西海岸を縦断する自然歩道「パシフィック・クレスト・トレイル」を3カ月で踏破したストレイドの回顧録をもとにした映画です。第87回アカデミー賞で主演女優賞と助演女優賞にノミネートされました。
つらい境遇でも人生を楽しんでいたシェリルは、母親ボビーの死に耐えられず、優しい夫を裏切りました。そして、ドラッグと男に溺れる最低の生活を送っていました。このままでは残りの人生も台無しだと思った彼女は、自分を見つめ直すために、名酷な自然歩道の踏破に挑もうと決意します。しかし、詰め込みすぎたバックパックにふらつき、テントを張るのに失敗するなど、数々の試練が彼女を襲います。
撮影は実際にパシフィック・クレスト・トレイルで行なわれました。また、再現された過酷な旅と美しい風景も見どころです。
星の旅人たち(2010)
約1000キロにもおよぶ巡礼路をたどる旅を綴ったロードムービーです。主人公のトムは、聖地巡礼を始めた矢先に命を落とした息子に代わり、遺灰を手に旅を引き継ぎます。
アメリカの眼科医トムのもとに、ひとり息子ダニエルの訃報が届きます。そしてトムはフランス南国境の町サン=ジャンを訪れます。息子の遺体と対面し、彼が聖地巡礼の旅に出た矢先に命を落とした事故を知ります。トムは、息子が聖地巡礼の旅に何を求めていたのか理解したいです。そのため、遺品のリュックを背負い、遺灰を手に歩き始めます。旅の途中、彼は出身も目的もさまざまな巡礼者と出会います。
旅を通じ、意地張りの自分を救っていく父親の姿に感動を覚える傑作です。